■歯周病と全身疾患




最近のアメリカのNIH(アメリカ国立衛生研究所)の疫学研究によって、歯周病は心疾患を引き起こすリスクファクター(危険因子)のひとつであるということがはっきりしてきました。 関係がある心疾患は感染性心内膜炎と虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)ですが、虚血性心疾患については冠状動脈疾患、脳血管性疾患の項で説明させていただきましたので、今回は感染性心内膜炎についてのみ説明させていただきたいと思います。感染性心内膜炎

もともと心臓弁や心内膜壁に障害がある人や人工弁を挿入しているような人では、その部分での血液の流れが停滞しやすいため、抜歯や歯周病、歯周病などの治療、歯ブラシなどにより侵入した歯周病細菌がこのような場所に血流を介して付着、増殖し、感染性心内膜炎を引き起こすことがあります。

感染性心内膜炎の原因細菌としてはストレプトコッカスサンギュス(31.9%)、ストレプトコッカスオラリス(29.8%)と口腔連鎖球菌がもっとも多く検出されますので、これだけでも感染性心内膜炎を予防するために口腔内清掃の重要性を理解していただけると思うのですが、実際に歯周病細菌の数を調べてみますと、不思議とアクチノマイセテムコミタンスが若干みつかる程度で他の歯周病細菌は非常に少ないのです。

このようにアクチノマイセテムコミタンスやプロフィロモナスジンジバリスなどの歯周病細菌の検出率は少ないのですが、これらの歯周病細菌は上皮下結合組織や口腔上皮細胞内に侵入することが報告されておりますので、これらの歯周病細菌によって引き起こされる炎症反応が、連鎖球菌群などを血管内へ侵入するための侵入路を提供しているのではないかということが考えられているのです。

こういったことは実際にマウスを使った膿瘍形成実験でも同様の結果が報告されており、口腔レンサ球菌単独で感染させた場合と歯周病細菌と混ぜて混合感染を起こさせた場合とでは、明らかに膿瘍形成は相乗的に大きくなるとともに、回収される菌数も増えるということがわかっております。すなわち、この結果は歯周病細菌が他の細菌による感染を助長しているという証拠であり、細菌感染性の疾患を減らすためにも歯周病を治さなければならない大きな理由といえるのです。